In situ hybridization/In situ ハイブリダイゼーションとは、組織内でのmRNAの局在を検出する良い技術であるが、どういうわけかシグナルが検出出来ないということも良くある。
シグナルがうまく検出出来ない理由としては
1. プローブがうまくできていない、もしくは壊れている。
2. 組織が十分に固定されていない(mRNAが壊れてしまっている)。
3. Whole-mountの場合、ProteinaseK(以下ProK)処理が短いor長い。
4. 3.と関連して、プローブの浸透が悪い。
5. 発現量が少なく、In situ hybridizationで検出出来る限界以下
1は論外ですので、ちゃんと”きれいなゲル”で泳動して確かめましょう。5についてはその根拠があるならギブアップも視野に入れましょう。問題は2〜3です。
組織の固定が不十分
これはよくあることで、小さい胚だからといって短時間の固定でも大丈夫というわけではない。私はニワトリ胚を扱っているとき、プロトコル通りにすべてのステージの胚を1オーバーナイトで固定を行っていたが、ある情報筋からステージ14とか15の胚で4℃で2日間、4日か5日胚なら4℃で3日間固定するとシグナルが向上すると聞いて試したところ、シグナルの検出が劇的に良くなったことがある。抗体染色には向かないが、In situ用にPFA(パラホルムアルデヒド)固定するなら試す価値が十分にある。私の使っているナメクジウオのごく小さな胚でさえ、常温1時間固定でOKらしいが、4℃オーバーナイト固定の方が確実に良いシグナルが得られている。
ProK処理時間の問題
Whole-mount in situの場合、ProK処理はプロープの浸透を助ける上で大事なステップである。なので、ProKの濃度、処理時間は十分に検討する必要がある。処理時間を長くする場合、固定が甘いと後のハイブリダイゼーションのステップで胚がボロボロになってシグナル以前の問題になるので、やはり固定が大事。これに加えて、界面活性剤の種類を見当するのもありである(tween-20ではなくtritonX-100を使ってみる。もしくは両方使うこともある)。2種類の界面活性剤を使う場合、ProK処理を短くしないと、胚が簡単にボロボロになるので注意。
プローブの浸透が悪い
おそらくProK処理の検討、界面活性剤の検討を通して基本的には解決するはずである。ただし、あまりに長いプローブを使っている場合、やはり”浸透が悪いのではないか”と勘ぐってしまうことがある。もしプローブのサイズの問題があるときは、アルカリ加水分解によってプローブの長さを調整するのも一つの手である。加水分解については私は2度ほど経験があり、1つは元のプローブ長さ2.4kbpくらい、もう一つは3k超えのものをそれぞれ半分の長さくらいにしたところ元のプローブより強いシグナルを得られるようになった事がある。
アルカリ加水分解に関しては以下のリンクが参考になる。
DIG、ビオチン、蛍光分子を用いたDNA、RNA、オリゴヌクレオチド のラベリング方法
以下のリンクに示してあるDEPC処理は1度だけ試してみて、たしかに効果があった。しかし、その後の処理がやや面倒なのとPBSTに○○(まだ論文になってないので伏せておきます)(論文になりました。詳しくはOno et al. 2018を参照)を加える事でシグナル強度が増したので、その後はやっていない。
組織切片での豊富なあるいは希少な mRNA の検出のための、Non-RI 標識プローブを用いた In Situ ハイブリダイゼーションプロトコールのシンプル化
楽しいIn situ hybridization ライフを!!
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